15%が新規キーワードだから自動化が必要 の嘘

Google 広告の運用に関わっている方は、Googleからも運用代理店からも以下のような発言を幾度となく聞いたことがあると思います。

●Googleでは1日あたり35億回の検索がされている
●そのうちの15%(くらいだった気がする)が初めて検索されるキーワードである

そして、これを理由に「なので、手動運用でキーワードを登録して入札単価を調整したり、キーワードに合わせた広告を人間が作っていては追いつかない」と彼らは主張します。

で、「故に、部分一致のキーワードの利用や動的検索広告の利用などのターゲティングの自動化、スマート自動入札の利用、動的検索広告やレスポンシブ検索広告などのクリエイティブの自動化が必要だ」と彼らは締めます。

ですが、はっきり言ってこれはほとんどのアカウント(広告主)に対しては嘘です。

嘘という表現に抵抗感がある方は「当てはまらない」と読み替えてください。

Googleの発言も批判的に検証しなければならない

Googleの言うことだから、と手放しで信じるのではなく、彼らもふつうに恣意的に誘導しようと仕掛けてくるので、「それホント?根拠はあるの?根拠になってなくない?関係なくない?」と批判的に検証しなければなりません。

この記事では、Googleがターゲティングの自動化・スマート自動入札・クリエイティブの自動化を推める根拠としている「35億回」と「○%は新しいキーワード」について、論理的に検証します。

なおこの記事は、「理由がおかしい」と指摘するものであり、ターゲティングの自動化・スマート自動入札・クリエイティブの自動化そのものを否定する意図はありません。

部分一致のキーワードを使うにしても、スマート自動入札を使うにしても、レスポンシブ検索広告や動的検索広告を使うにしても、上記した観点を根拠にすべきではありません。他の根拠を探しましょう。

※2022年7月以降は拡張テキスト広告の新規作成ができなくなるので、レスポンシブ検索広告は使いたい/使いたくないに関係なく使わなければなりませんけれども。

問題点1:全世界で何回検索されているかは関係ない

当然ですが、全世界でGoogle全体で何回検索されていても、それは手元で運用されているGoogle 広告のアカウントとは関係がありません。

  • 広告対象の商品・サービスに興味を持つ可能性がある人が検索するのはどんな検索語句なのか
  • その検索語句をカバーできるターゲティングが設定できているのか
  • そのターゲティングは予算に対して適切なバランスが取れているのか
  • そのターゲティングに対して十分なインプレッションシェアで広告を表示できているのか

これがGoogleの検索広告を扱うときにキーワードについて考えるべきことです。

もう少し広く考えても、ターゲティングしているキーワードの検索回数の増減くらいで、Google全体がどうでも関係ありません。

Google全体で検索される回数が1/3になっても、広告のターゲティングで設定しているキーワードが検索される回数が変わらなければなんの影響もないですし、Google全体の検索回数が倍になっても商品・サービスに興味があるキーワードでの検索回数がむしろ減ればトラフィックは減ります。

つまり、Google全体でどうでも関係がありません。

Google全体の動きを知っておくことも必要ではありますが、日々の運用には関係がないことなので手元の広告とは切り離して、あくまで雑学として扱いましょう。

問題点2:新しいキーワードはエンタメ系が多い

この観点でも、Google全体でどうなのかと手元の検索広告の運用とはまったく関係がありません。あくまで、広告の対象としている商品・サービスに興味がある人が検索するキーワード(厳密には検索語句)の事を考えましょう。

そもそも、この「新しい検索語句」ですが、実態は以下のようなキーワードです。

新しいキーワードの例:コンテンツ名の検索

コンテンツに関するキーワードはヒットするとたくさん検索されますが、そのコンテンツが登場するまでは検索されることはありません。

当然です。そのコンテンツができるまではその名前のものがこの世に存在していないので。

映画・ドラマ・アニメ・コミックス・ライトノベル・ゲーム・楽曲など日々たくさんのコンテンツが作成されていますので、「新しく検索されるキーワード」のなかで「新しいコンテンツ」が占める割合はかなりのものです。

新しいキーワードの例:アーティスト名の検索

アーティスト名に関する検索もヒットすると多く検索されます。

しかし、そのアーティストがデビューする前に検索されることはありません。なぜならそのような名前のものはこの世の中に存在していないので。

音楽レーベルや出版社を通さなくても作品を発表できるようになった昨今、インターネット上で注目されるようになるアーティストさんは日々登場しています。コンテンツと同じく入れ替わりが激しく、なんらかのきっかけでバズったら一気に検索されるので検索ボリュームも相当になります。

新しいキーワードの例:新しい概念に関する検索

新しい概念についても話題になると「それってなんだろう?」と検索する人が増えますのでそれなりの検索ボリュームがあります。しかし、その概念が登場するまでは誰も検索できません。

単体では多くなくともカテゴリとして多くなるキーワードもある

単体でのボリュームは多くなくとも、飲食店などの店舗も激しく入れ替わりを繰り返しますので、「新しくできた店舗名での検索」と丸めるとかなりのボリュームになります。

また、予測変換が荒ぶったなどで予期していない言葉で検索してしまうこともあるでしょう。これを「全世界の全Googleを利用するユーザー」を対象にしたらものすごいボリュームになることは想像に難くありません。

というように、Googleで毎日初めて検索されているキーワードがどれだけあっても、それが広告をしている商品・サービスに関係しなければ関係がないわけですが、初めて検索されるキーワードには上記のようなエンタメ系などが多いため、手元の広告には関係がないことがほとんどです。

広告の対象とする商品・サービスに合わせて考えよう

「Google全体で」どうなのかは関係がないし、その中身も冷静に考えたら関係がなさそうなものです。

なので、「35億回の15%って相当な数だ!確かに人力では無理そう!自動化しなきゃ!」と飛びついてしまうのではなく、あくまで広告をする商品・サービスに興味を持つ人が検索する言葉がどうなのか、どの程度までアプローチしたいのか、予算がどれくらい使えるのか、で考えましょう。

当てはまらない例:過払い金請求を扱っている司法書士事務所

サラ金でお金を借りたことがあって「自分にも過払い金があるかもしれない」と思って検索する人が検索する検索語句が毎日15%ずつ新しい検索語句に入れ替わるんでしょうか。

変わりませんよね。「過払い金」を表す新しい言葉ができたりとかはしません。

法改正等で表現が変わることがあります(例えば相続における「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額の請求権」に変わったとか)が、それも日々起こることではないので、都度の対応で十分です。

このような広告の場合は、「過払い金」に関する検索語句をどこまでカバーしたいのかでキーワードのテキストおよびマッチタイプを決めます。

「借金 返せない」とかまで含めたいのか、すでに過払い金があることはわかっててどこに頼むかを検討している層だけに絞ってアプローチしたいのか、過払い金があるような気がしている層までは広げたいのかなど、商売の対象をどこまで広げたいのかと、それに見合う予算があるのかなど、手の届く範囲の情報でキーワードのテキストとマッチタイプを考えましょう。

そして、そもそも検索語句がコロコロ変わらないので、それをターゲティングするキーワードも変える必要はありません。適切に登録してあげれば人力でも十分コントロールが可能です。なので、純粋に個別クリック単価と自動入札のどちらのほうが調子がいいのかを比べて良い方を設定してあげれば良いわけです。そして、検索語句が変わらないので広告のクリエイティブも検索語句を検討して人力で作成するので十分に追いつきます。

当てはまる例:デジタルコンテンツの販売・レンタルサイト

中には当てはまる例もあります。

それは、先に例示したような、新しいキーワードが直接的に関わるサービスを運営している場合です。

映画やドラマやテレビ番組の販売やレンタルであったり、音楽コンテンツの販売をしているサイトでは、日々新しいキーワードが登場し、そのリンク先も膨大になります。このようなサービスの検索広告をしている場合、日々追加される新しいコンテンツのキーワード・広告・リンク先を手動で登録して個別クリック単価で入札するのは現実的ではありません。

このような場合は、動的検索広告とスマート自動入札の組み合わせを利用すべきでしょう。

ですが、これははっきり言ってしまえば、35億回の15%が新しいキーワードだからではなく、取り扱う商品・サービスの追加が早い頻度であるからって理由であって、やっぱりGoogleの言い分が当てはまるわけではないんですけれど。

ほとんどの商品・サービスを探す検索語句は変化しない

Googleの言い分が当てはまる例と当てはまらない例を1例ずつ書きましたが(当てはまる方もあんまり当てはまってませんが)、はっきり言って、ほとんどの商品・サービスが当てはまらない側だと思います。実際、わたしが直接および間接的に関係しているアカウントの数は百から先は覚えていないので沢山ありますが、日々変わる検索語句に対応しなければならないアカウントは一桁あるかないか程度です。

なので、主語が大きいなんかそれっぽい誘導に惑わされることなく、地に足をつけて手が届く範囲の情報を根拠にしっかり考えて検索広告に取り組みましょう。