ITP・ATTを考慮した時系列分析のためのまとめ

【最終更新:2021年8月18日】

この記事では、広告レポートのコンバージョンの件数を時系列で見る際に、誤った評価を下してしまわないように、ITPやATTの影響を考慮して考える方法を紹介しています。

つまり、○年○月と前年同月を比べるとコンバージョン数が減っている場合に、本当にお問い合わせや販売などが減っているのか、計測の欠損により管理画面上(レポート上)のコンバージョン数が減っているだけなのかを判断できるようにすることを目的にしています。ITPおよびATTの詳細ないしは技術的な解説や回避云々については触れていません。

コンバージョンに関するデータが不連続になる時期一覧

iOSやSafariが絡む配信のコンバージョンに関する数値は、新しい方から順番に以下のタイミングでデータが不連続になっています。なので、このタイミングを挟む前後比較をする際には単純にコンバージョン数の大きい小さいを比較するのではなく、間に挟まるイベントによる影響を調整して比較しないと判断を誤ります。

  • 2021年4月:ATTの正式導入・IDFAオプトインの義務化
  • 2020年8月:Yahoo!広告のLocalStorageを利用したコンバージョン計測のサポート開始
  • 2019年4月:ITP 2.2
  • 2019年3月:ITP 2.1
  • 2017年9月:ITP 1.0

なお、厳密には、時期ではなくiOSやSafariのバージョンによるので、より正確な検証をするには、比較する時期のiOSのブラウザのバージョンやSafariのバージョンの比率を見なければなりません。しかしながら、PDFになった広告のレポートしか手に入らない場合もあるので、その場合は時期で見るほかありません。

計測条件が不連続なのに数だけを比較した場合の問題

計測条件が異なる数値を、単純に数字の大きい小さいだけで比較するのは意味がないどころか、誤解してかえって悪影響になる可能性があります。ところで、オンライン広告のレポートでは、ITPやATTの影響で計測条件が変わっているにも関わらず、同じ列に時系列で表示されてしまいますので、あたかも同じ条件で計測された数値であるかのように誤解しやすい状態になっています。

例えば、ある月のコンバージョン数が100件だったとします。前年同月のコンバージョン数は120件でした。この結果をもって「昨対でコンバージョンが減ってる!」と判断するのは安直が過ぎます。

なぜなら、ITPによって計測ができるコンバージョンの期間が減っていたり、ATTによってコンバージョン計測の欠損が起きているなどで、実際には先月も120件のコンバージョンに相当するアクションがあったけれども、計測ができたのは100件だけだった、ということがあり得ます。なのに、「減ってる!」「対策しなきゃ!」と動いてしまうと、むしろバランスを崩してかえって悪化する可能性があります。

はっきり言って、わたしがコンサルティングの現場で見ている限りだと、運用型広告では「何もしなかったから悪くなった」のと同じくらい「間違った判断に基づいて余計なことをして悪くした」ケースがあります。

ITPおよびATTの影響を加味してデータを比較する方法

わたしはコンバージョン数を前後比較する際は以下の検討をしてから判断をするようにしています。以下はひとつの媒体について検討している例です。複数の媒体を実施していて広告全体の評価をしたい場合は、各媒体ごとにこの検証をした結果を合算して判断します。

1. iOSやSafariへの配信をしているかどうかを確認する

iOSやSafariへの配信がなければ、単純に数字を見比べて問題ありません。

2. 比較対象の間に計測条件が変わるイベントがあったか確認する

例えば、2021年8月と同年7月の比較など、比較する期間の間にITPやATTの変更がなかったときは単純に数値を見比べても問題ありません。一方、2021年7月と前年7月の比較では、ATTによるコンバージョンの欠損の影響を受けている可能性があるので、単純に数値を見比べると誤解する可能性があります。

3. 影響を受ける対象とその影響度を確認する

例えば、 ITP 2.2 を間に挟む前後比較では、コンバージョンが計測される期間が7日以内から24時間以内に短くなるため、実際の成果は変わっていなくても、計測されるコンバージョンの数が減少している可能性があります。ITP 2.2 の影響を受けていない配信の結果のアトリビューションを確認するなどして、ITP 2.2 によって計測されるコンバージョンの数がどれだけ減少している可能性があるのかを判断する必要があります。

例えば、コンバージョンのうち、1日以内が80%、2日以降7日以内が20%という状況だった場合、ITP 2.2 を挟むコンバージョン数の比較では、コンバージョン数は20%の減少までは同等以上の可能性があると評価できます。

4. 影響を受ける件数の全体に占める割合を確認する

iOSやSafariだけに配信している場合を除いて、配信結果にはITPやATTの影響を受ける配信と影響を受ない配信が混在しています。なので、全体に占める影響を受ける配信の割合を加味する必要があります。

例えば、ITP 2.2 を間に挟む前後比較をする場合で、前の期間のコンバージョン数が200件、後の期間のコンバージョン数が190件だったとします。そして、最後の広告接触から1日以内のコンバージョンの割合が80%、2日以降7日以内が20%で、iOSでのトラフィックの割合が40%だったとします。この場合、計測されるコンバージョンの件数は全体の40%に影響があり、その影響度合いは20%です。なので、後の期間のコンバージョンの件数は184件までは同等以上を維持していると言えます。なので、後の期間のコンバージョン数の190件は、「10件減っているから悪くなっている」と評価するのは間違っている可能性があります。

数値の分析は単純に数の大きさを見比べるものではない

コンバージョンの件数に限らずですが、数値は単純に数が増えた・減ったを見るだけでは意味がありません。むしろ間違った判断をして余計なことをしてしまうリスクがあるので、そのような見方はかえって有害とも言えます。とくにコンバージョンの件数については、単純にレポート上のコンバージョン数が減少していることだけで「悪くなっている」と判断して余計なことをしてしまう広告主・運用者は少なくありません。

なので、数値を比較する際は、その数値が計測される条件は同じなのかを検証しましょう。そして条件が異なるのなら、他のデータも突き合わせてどの程度の変化までは同等と判断すべきなのかを明らかにして、単純な数値の増えた減っただけで安直な判断をしないようにしましょう。

広告のコンバージョンはサンプル調査だと思ったほうが良い

広告のコンバージョン数はそもそも実数ではありません。

計測条件が同じ状態であれば、広告のコンバージョンが増えれば比例してお問い合わせや販売も増えるはずと考えるべきものです。いわば、広告のコンバージョンはお問い合わせや販売に対するマイクロコンバージョンみたいなものです。なので、計測条件が同じ期間においては広告のコンバージョン数を目的に考えてもいいですが、計測条件が異なる期間では広告のコンバージョンを目的にするのではなく、あくまでそれを参考に実際のお問い合わせや販売が増えているのか減っているのかを見る姿勢が必要です。

今後ますます計測は不透明になっていくと予想されるので、コンバージョンの計測に頼りすぎずに、コンバージョンの計測を参考に、実際のお問い合わせや販売と関連付けて考える能力が必要となるでしょう。

Appendix:ITP関連イベントの概要と注意すべきイベント

以下、iOS関連であった主要なイベントとその概要、および注意すべきイベント(★印つき)をまとめてあります。

★2021年4月:ATTの正式導入・IDFAオプトインの義務化

ATTの正式導入・IDFAオプトイン義務化 の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 14.5+

ATTの正式導入 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

ATTの正式導入 がコンバージョン計測に与える影響

Google 広告・Yahoo!広告のウェブページに誘導する広告については ITP 2.2 と変わらない。

アプリキャンペーン(Google 広告)やアプリ訴求キャンペーン(Yahoo!広告)ではアプリ内のイベントの計測ができなくなる。

Facebook広告では合算イベント測定をしていないとコンバージョン計測が欠損する。

Twitter広告では、第三者のアプリ計測プロバイダを利用しなければコンバージョン計測が欠損する。

ATTの正式導入 がリーチに与える影響

リエンゲージメント広告は配信ができなくなる。

ATTの正式導入 がターゲティングの精度に与える影響

行動と端末が紐付かなくなるのでオーディエンスターゲティングの精度が低下する。

2020年9月:ITPの対象拡大 - 影響あり(ただし大きくはない)

ITPの対象拡大の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 14.0+ の ブラウジング機能を有するほぼすべてのアプリ

ITPの対象拡大 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

iOS 14.0+ で動作するブラウジング機能を有するほぼすべてのアプリでITPが有効になりますので、ITP 2.2 以降と同じ状態となります。

★2020年8月:Yahoo!広告がLocalStorageに対応した「コンバージョン計測補完機能タグ」の提供開始 - コンバージョン計測補完機能タグのアップデートをしたら影響あり

※長いので「Yahoo!広告のLS計測」と略します

Yahoo!広告のLS計測 の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS12.3+ の Safari
  • パソコン:Safari 12.1.1+

Yahoo!広告のLS計測 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

Yahoo!広告のLS計測 がコンバージョン計測に与える影響

Yahoo!広告が「コンバージョン測定補完機能タグ」を用いることで、LocalStorageを利用したコンバージョン計測の補完に対応しました。これにより、ITP 2.2 以降の影響を受けてコンバージョン計測の期間が最後のインタラクションから24時間になっていたものが、最後のインタラクションから7日以内にまで計測期間を伸ばせるようになりました。

Yahoo!広告のLS計測 がリーチ・ターゲティングの精度に与える影響

ITP 2.3 から変化はありません。

2020年3月:Full Third-Party Cookie Blocking and More

※長いので「ITP 3pCFB」と略します

ITP 3pCFB の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 13.4+ の Safari
  • パソコン:Safari 13.1+
ITP 3pCFB が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

主要な広告媒体に関する範疇では ITP 2.3 からの変化はありません。

2019年9月:ITP 2.3 - 変化なし

ITP 2.3の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 13+ の Safari
  • パソコン:Safari 13.0+

ITP 2.3が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

ITP 2.3 がコンバージョン計測に与える影響

Cookieでの計測の場合はITP 2.2からの変化はない。LocalStorageを利用している場合はインタラクションから8日以上が経過したコンバージョンは計測されなくなる。

なので、LocalStorageを利用する計測をしていて、最後の広告接触から8日以上経過した後でもコンバージョンの獲得があった場合は計測されるコンバージョン数が減少する。

ITP 2.3 がリーチに与える影響

ITP 2.2 からの変化はない。

ITP 2.3 がターゲティングの精度に与える影響

ITP 2.2 からの変化はない。

★2019年4月:ITP 2.2 - 影響あり

ITP 2.2 の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 12.3+ の Safari
  • パソコン:Safari 12.1.1+

ITP 2.2 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

ITP 2.2 がコンバージョン計測に与える影響

Cookieでの計測の場合は、最後のインタラクションから24時間以上が経過したコンバージョンは計測されなくなる。

なので、24時間より長い期間で計測していて、最後の広告接触から24時間以上経過したあとでもコンバージョンの獲得があった場合は計測されるコンバージョン数が減少する。

ITP 2.2 がリーチに与える影響

リマーケティングの追跡期間が最後のインタラクションから24日以内に制限される。

なので、1日よりも長い期間のリマーケティングを実施していた場合、リーチが減少する。

ITP 2.2 がターゲティングの精度に与える影響

明言されていないが、データ量が減少するので低下していると考えられる。

★2019年3月:ITP 2.1 - 影響あり

ITP 2.1の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 12.2+ の Safari
  • パソコン:Safari 12.1+

ITP 2.1 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティグ精度への影響

ITP 2.1 がコンバージョン計測に与える影響

最後のインタラクションから8日以上が経過したコンバージョンは計測されなくなる。

なので、8日より長い期間で計測していて、最後の広告接触から8日目以降でもコンバージョンの獲得があった場合は計測されるコンバージョン数が減少する。

ITP 2.1 がリーチに与える影響

リマーケティングの追跡期間が最後のインタラクションから7日以内に制限される。

なので、8日よりも長い期間のリマーケティングを実施していた場合、リーチが減少する。

ITP 2.1 がターゲティングの精度に与える影響

明言されていないが、データ量が減少するので低下していると考えられる。

2018年9月:ITP 2.0 - 影響なし

ITP 2.0の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 12+ の Safari
  • パソコン:Safari 12.0+

ITP 2.0が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

ITP 2.0がコンバージョン計測に与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

ITP 2.0がリーチに与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

ITP 2.0がターゲティングの精度に与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

2018年3月:ITP 1.1 - 影響なし

ITP 1.1の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 11.3+ の Safari
  • パソコン:Safari 11+

ITP 1.1 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

ITP 1.1 のコンバージョン計測に与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

ITP 1.1 のリーチに与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

ITP 1.1 のターゲティングの精度に与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

★2017年9月:ITP 1.0 - 計測タグの差し替えが遅れていたら影響あり

ITP 1.0 の影響対象となるOSとブラウザ・アプリ

  • iPhone, iPad:iOS 11+ の Safari
  • パソコン:Safari 11+

ITP 1.0 が与えるコンバージョン計測・リーチ・ターゲティング精度への影響

ITP 1.0 のコンバージョン計測に与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

ITP 1.0 のリーチに与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし

ITP 1.0 のターゲティングの精度に与える影響

媒体の推奨する計測タグの設定をしていれば影響なし