検索広告では機械学習の最適化は何をするのか

Google 広告・Yahoo!広告の運用において、機械学習を意識した広告運用については巷の代理店や運用者による非公式のものだけではなく、Google・Yahoo!による公式の情報発信もたくさんされています。特に、2018年後半くらいから、従来だったら巷の代理店や運用者がしていたようなアカウントの構造やキーワード・広告の作成の仕方などの個別のテクニックをGoogle・Yahoo!が公式に話すことが増えてきています。

しかしながら、公式・非公式を問わず、個別のテクニック論に走りすぎていて、広告とは?検索広告とは?機械学習がなにをどうしてくれるから広告の効果が向上するの?という根本的な視点が抜けていて真に受けると危険な場合があります。特に「○○をすると機械学習が促進される」というような、個別の事象に対して「やるのとやらないの、どっちがいいの?」という論調で語られるものは特に注意が必要です。料理に例えると、「グルタミン酸を加えるとおいしくなる」という情報を目にしたとします。グルタミン酸はいわゆるうま味成分なので、含まれていないよりは含まれていたほうが良い気がするでしょうか。おそらく、これを読んでくださっている皆様は、「料理によるのでは?」などの疑問が浮かんだと思います。そのとおりです。
広告運用についても同様に、「それ、ほんと?」と疑う視点が必要です。特に広告運用に関する情報発信については、非公式のものはポジショントークやリード獲得のためのバラマキも少なくありませんし、公式のもの媒体はお金を取る側で我々はお金を払う側であることを忘れてはなりません。

また、非公式のものには、もはや「機械学習が促進される」という結びにすれば何でも許されると思っているかのように、破綻・飛躍した情報発信も少なくありません。

なので今回は、Google 広告・Yahoo!広告の検索広告において、機械学習は一体なにをしてくれるのかという観点を説明します。この観点を理解すれば、「○○をすると機械学習が促進される」という情報発信に触れたときに、その情報は信じて良いものかどうか、何に気をつけるべきかを分かるようになります。むしろ、このような情報発信に頼ることなく、自分で考えられるようになるでしょう。

広告運用はどうなったら最適化されているのか

まずはおさらいです。

そもそも、広告は「商品・サービスを購入して欲しい」「契約につながる可能性があるリードを獲得するために資料請求をして欲しい」などの目的があって利用するものです。つまり、広告を利用する目的がより多く達成されたり、同じ結果をより少ない広告費で獲得できたりする状態(長いので「成果が向上する)と言い換えます)が、広告運用が最適化されている状態です。
媒体の推奨する通りに運用することも、機械学習が促進させる様に運用ことも、それだけではどちらも最適化ではありません。媒体の推奨に従って運用をしたり、機械学習が促進されるように運用したりした結果として成果が向上したのであればそれは最適化がされたと言えます。しかしながら、反対に成果が向上しなかったのであれば、媒体の推奨に従っても機械学習が促進される運用をしたとしても、それは最適化ではありません。

つまり、広告の目的を達成してくれる可能性がある、なるべく多くの人に広告を見てもらうこと、広告を見た、なるべく多くの人に広告の目的を達成してもらうこと、この2点をよりよい状態にしていくことが広告運用の最適化です。さらに検索広告においては、広告がクリックされた段階で広告費が発生し、1クリックあたりの広告費は品質評価によって変動するという特徴があります。

なのでまとめると、以下の観点が理想的な状態になっている場合、検索広告は最適化されていると言えます。

  • コンバージョンに至る可能性があるなるべく多くの検索ユーザーに広告を見せる
  • 広告を見た検索ユーザーが広告をクリックしてくれる様に広告を作る
  • 広告をクリックしたユーザーがコンバージョンに至ってくれるようにリンク先を工夫する
  • 余計な広告費がかからないようにターゲティングする
  • 費用対効果が良くなるように広告のライティングを工夫する

この点については、先日公開した「検索広告の「最適化」を言語化する」で詳しく解説しています。

検索ユーザーがお客様になるまで

いよいよ、検索広告において機械学習が何をしてくれるのかを解説したいところですが、その前にもうひとつだけ大切なことがあるのでお付き合いください。いっかな機械学習が無数のシグナルから学習してリアルタイムで調整を実施し、人間には不可能なレベルな高精度の運用を実現してくれたとしても、Google 検索・Yahoo!検索をしているユーザーに対して広告を表示するという、検索広告の枠組みから外れることはできません。そこで、ひとりの検索ユーザーがお客様になるまでをまとめます。

  • まず、何かが欲しい・困りごとを解消したいなどのニーズがある人に生じます
  • その人はネット検索によってそのニーズを満たそうと思い立ちます
  • Google 検索またはYahoo!検索で、ニーズを満たせそうなキーワードを考えて検索します
  • 検索結果に表示された一覧の中から自分のニーズが満たせそうなリンクを探してクリックします
  • ページの内容を見てニーズが満たせそうだと思ったら購入や申込みをしてお客様になります

実際には複数のページを見比べたり、色々なキーワードで検索をしたり、最終的に判断をする前に人に相談をしたり、なんとなくしばらく置いてみたりなど、繰り返しが発生したり間に他の行動が入ったりしますけれども、大枠では、ニーズを自覚し → 検索をしようと思いたち → 検索をし → 広告を見て → 広告をクリックして → リンク先の内容を見て → コンバージョンに至る という流れは変わりません。

このことを改めて理解してもらった上で本題の検索広告において機械学習が何をしてくれるのかを解説します。

検索広告において機械学習は何をしてくれるのか

結論を言うと、検索広告において機械学習ができるのは以下の2点だけです。

  • 広告を表示するかどうか
  • どの広告を表示するか

段階を追って解説します。なお、入札価格の調整は広告を表示するかどうかの観点に含まれます。

まず、ニーズが生じる段階ですが、機械学習がニーズを発生させることはできません。機械学習が人の実生活に干渉をして蛇口から水漏れを起こしたり、ある人の脳に直接語りかけて新しいキーボードを欲しくさせたりすることはできませんから。

次に、その人がニーズを満たすためにGoogle 検索・Yahoo!検索で検索をするかどうかの段階について、ですが、機械学習が人に検索をさせることはありません。機械学習が「ねぇねぇ。あなたはGoogleで検索をしたほうが良いよ」と働きかけたりはしません。

その次のどのようなキーワードで検索をするかの段階においても、機械学習が「あなたはこういうキーワードで検索したほうが良いよ」と働きかけることはできません。

次の段階で、いよいよここで機械学習の出番が来ます。検索ユーザーが検索したキーワードやその他のシグナルから、この検索ユーザーに対してこの検索で広告を表示するとコンバージョンが達成されるかどうか、どの広告を表示したらコンバージョンが達成されそうかをリアルタイムで判断します。

表示された広告を検索ユーザーがクリックするかどうかについては、機械学習が「あなたはこの広告をクリックしたほうが良いと思うの」と検索ユーザーに働きかけることはできません。入札価格の調整によって予算やコンバージョン単価の目標値が許す範囲でなるべくクリックされやすい位置に表示させたり、なるべくクリックされやすい広告を選んで表示するなど、クリックされる可能性を高めてはくれますが、実際にクリックするかどうかの意思決定には介入できません。

此処から先はわかりますよね。機械学習が、広告のリンク先の内容を見ているユーザーに対して「あなたは絶対にここの商品・サービスを使ったほうが良いよ」と説得してコンバージョンに至らせることはありません。

改めて整理してみると、魔法のように無からコンバージョンを生み出してくれるかのように触れこまれている機械学習が、実はそんなにできることがないと気づけるんじゃないでしょうか。昨今の広告運用に関する情報発信では、機械学習を促進させることが最優先事項のように語られることも多いですが、検索広告についてはそうではありません。

まず、広告とは?検索広告とは?という部分をしっかりした上で、機械学習もできる限り活用するという順番で段階を追って考える姿勢が必要です。ただし、これはあくまで、検索キーワードという形でニーズを表明して情報収集モードに入っている検索ユーザーに対して、「だったらうちのはどうですか?」と提案する検索広告の運用に関する場合です。ディスプレイ広告やSNS広告など、情報収集モードに入っていないユーザーに対してアプローチする広告では事情が異なります。

検索広告における機械学習の効果

まとめると、検索広告において機械学習によって得られる効果は以下のいずれかまたは両方です。

  • 検索キーワードは遠くてもコンバージョンに至りそうなユーザーに広告を表示して、コンバージョン件数の増加を図る
  • 検索キーワードはピッタリでもコンバージョンに至らなそうなユーザーには広告を表示せず、余計な広告費の発生を防ぐことでコンバージョン単価の改善を図る

さらに、広告を表示する場合おいては、予算やコンバージョン単価・費用対効果の目標値の許す範囲でしっかり入札することで広告の表示機会の損失(コンバージョンの獲得機会の損失)を防ぎつつ、不必要に高い入札をして余計な広告費を発生させないこともしてます。

逆の言い方をするとこれ以外のことは機械学習にはできません。

検索広告の機械学習を理解すれば惑わされない

絞り込み部分一致やフレーズ一致・完全一致などのガチガチに範囲を限定するキーワードしか登録していない場合、機械学習の効果は上記2点目の「検索キーワードはピッタリでもコンバージョンに至らなそうなユーザーには広告を表示せず、余計な広告費の発生を防ぐことでコンバージョン単価の改善を図る」効果と、入札価格の適正化だけになります。

この状況下で「コンバージョンの件数を増やしたいから」と言って、入札戦略だけコンバージョン数の最大化に変えても意味がありません。目標コンバージョン単価を利用していてコンバージョン単価の目標値が少なすぎたりなどで、広告の表示機会を損失していた場合などはもしかしたらコンバージョンが増えるかもしれませんが、これは機械学習で最適化されたのではなく、もとの運用のダメな点がまともになっただけです。

一方、コンバージョン単価が高くて困っているときに「機械学習が促進されればコンバージョン単価が下がるかも」と思って、最近よくGoogleが言うことを真に受けて、絞り込んでいない部分一致のキーワードを追加したり、動的検索広告を使ったり、レスポンシブ検索広告を使うと逆効果になります。なぜならばこれらは上記1点目の「検索キーワードは遠くてもコンバージョンに至りそうなユーザーに広告を表示して、コンバージョン件数の増加を図る」効果を狙いに行くための行動だからです。対象が広がるので、コンバージョン単価はむしろ高くなります。逆にこれでコンバージョン単価が下がった場合もあるにはありますが、それは、もともとの配信が的はずれだったと評価するべきです。

「機械学習を促進してうんぬん」という情報発信が増えてから、色んな人のいろんな発言に左右されて迷走してしまっているアカウントを多く見ます。手元のアカウントの舵を公式・非公式をごちゃまぜにした他人の情報発信に預けてしまって、自分で舵を取れていない運用者が増えてきているように感じます。今一度、広告ってなんなのか?検索広告ってなんなのか?いま手元のアカウントはどういう状態なのか?機械学習は何をしてくれるのか?自分の頭で考えて、自分で舵を取れるようになりましょう。

この記事に対する質問や、「こんな情報発信を聞いたことがあるんですが本当ですか?」というような質問があれば、acssemble 新田真隆の質問箱からご質問ください。

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