その施策で機械学習は検索広告を最適化するか

Google 広告・Yahoo!広告の検索広告の運用に機械学習を活用する方法の情報発信は、巷の代理店や運用者によるものだけではなく、Google・Yahoo!からの公式からのものも溢れていて、「○○をすると機械学習が促進される」といった情報をたくさん目にします。数が多いからこそ、間違ってしまっている情報や、取り扱いには注意が必要な情報も多くなっています。

なので今回は、Google 広告・Yahoo!広告の検索広告の運用について、機械学習が促進されると言われている方法について、そもそもその「○○をしたほうがいい」という発言は何を意図しているのか、なぜそのような発言が出てきたのか等をふまえて、意味があるかどうか検証します。

検索広告において機械学習は何をしてくれるのか

まず、検索広告の運用において機械学習が何をしてくれるのかをおさらいします。なお、Google 広告・Yahoo!広告における機械学習を活用した運用では自動入札の利用が前提になっていますので、特に断りがない限りは自動入札を利用している場面を想定します。

詳しくは「検索広告では機械学習の最適化は何をするのか」で解説していますので、こちらでは概要のみ記載します。

Google・Yahoo!が公式に発言し、Google・Yahoo!の発言を信じて疑わない人たちも口を揃えて言う、Google 広告・Yahoo!広告の運用に機械学習を活用するべき触れ込みは「管理画面からは取得できない無数のシグナルを利用してリアルタイムで最適化をするので、手動では不可能な高精度の運用ができるから」です。こう言われると機械学習がとても素晴らしいもので、この素晴らしい機械学習の恩恵を受けられるようにGoogleやYahoo!の言うことを全部聞かないと損をするように聞こえるでしょう。

しかしながら検索広告において機械学習ができることはあまり多くありません。

検索広告は、何らかのニーズを自覚した人がGoogle 検索やYahoo!検索で検索をして、ようやく表示される広告です。機械学習が人に働きかけてニーズを生じさせたり自覚させたり、Google 検索やYahoo!検索で検索させたりすることはできません。また、広告をクリックするかどうか、広告をクリックしたあとにコンバージョンに至るかどうかの段階についても、機械学習が検索ユーザーを説得して広告をクリックさせたり購入させたり資料請求をさせたりはしません。

では検索広告において機械学習は何をしてくれるのかと言うと、広告のオークションが発生するたびに、「広告を表示するべきかどうか」「どの広告を表示するべきか」「いくらで入札するべきか」を判断しています。一言でいうと、機械学習を活用した運用では手動運用よりも以下の観点で優れています。

  • 検索語句からはニーズがなさそうな検索でも、コンバージョンに至りそうなユーザーに対しては広告を表示することでコンバージョンの件数を増やす
  • 検索語句からはニーズがありそうな検索でも、コンバージョンに至らなそうなユーザーに対しては広告を表示しないことで無駄な広告費の使用を抑えて費用対効果を良くする

これが、手動運用では不可能で機械学習でなければ実現できない配信状態です。一方で以下の観点は手動運用でもできるけれども、機械学習のほうがより高精度にできる内容です。

  • 検索ユーザーがクリックしそうなパターンの広告を表示する
  • 検索ユーザーがコンバージョンに至りそうなリンク先の広告を表示する
  • 表示機会損失を少なく抑えつつ、無駄な広告費がかからない丁度いい入札価格を設定する

「機械学習が促進されてうんぬん」という情報については上記の観点に照らし合わせて、お手元のアカウントに対して望ましい変化が起こりそうかどうかを考えるといいでしょう。

最近の機械学習は頭が良くなっているから配信開始時やコンバージョン件数が少ないときでも自動入札を安心してお使い頂けるのか

結論を言うと、わたしはおすすめしません。

確かに「最初から利用しても大丈夫だった」という声も聞きますが、わたしの手元ではそうではなかったアカウントがいくつもあります。実際、新しいキャンペーンをコンバージョン数の最大化で始めたら、1日の予算を10,000円に設定しているのにも関わらず全然広告を表示してくれなく、まったくクリックされない日もあったり、クリックされた日でも3,000円程度でした。もちろんコンバージョンの獲得はありませんでした。
キーワードも広告もアカウントの構造も同じまま、入札戦略だけ個別クリック単価に変更して入札価格を高めてあげたら、表示回数が増えててクリックもされ、コンバージョンも毎日コンスタントに獲得できるようになりました。しばらくしてから改めてコンバージョン数の最大化に改めて戻したところ、予算も設定に近いところで安定し、コンバージョンも毎日コンスタントに獲得できるようになりました。

触れ込みでは「アカウント・キャンペーンの配信結果以外のデータも利用して学習をしているので、アカウント・キャンペーンに配信結果がなくても自動入札はうまく機能してくれる」とのことですが、要は、ヨソでの経験を頼りにウチの広告をやろうとしている状態です。ヨソはヨソ、ウチはウチ、ということもあるでしょう。

新しいキャンペーンでコンバージョン数の最大化などの自動入札を最初から利用したときでも、しっかり表示されてクリックもされ、コンバージョンも獲得できた場合はその結果から学習されますから、そのキャンペーンに合わせた配信に近づいていきます。しかしながら、最初のヨソの経験をもとに当てずっぽうで調整された結果として広告が全然表示されないのであれば、学習も進みませんので個別クリック単価にしてまずは広告を表示させないとどうにもなりません。

「これくらいは表示されるはず」「こういう検索語句で広告が表示されるはず」「クリック単価は概ねこれくらいになるはず」という基準をキーワードプランナーやその他のデータから考えておいて、そこから実際の配信結果が望ましくない方向にかけ離れているのであれば、いったん自動入札を利用するのを諦めて個別クリック単価にする判断も必要です。

インプレッションボリュームを高めると機械学習が促進されて最適化されるのか

結論を先にいうと、この考え方はしないことをおすすめします。

「インプレッションボリュームを高めると機械学習が促進される」は、Googleが「Hagakure」と名付けて自動入札の利用を促進させようとしたときによく言っていた発言です。これには背景があって、その背景を理解しないとこの発言の趣旨を誤解し、おかしなことをしてしまいます。

それまではアカウントの構造はSKAGs(詳しくは「細分化の究極系 SKAGs について考える」をお読みください)のように、なるべく細分化するのが良いと多くの運用者が思っていました。中には本当にひとつの広告グループにはキーワードをひとつしか入れてはならないと思い込んで、テキストが同じなのにマッチタイプが異なるキーワードも別々の広告グループにする人も少なくありませんでした。

このような運用の傾向を踏まえて、機械学習の促進を妨げる過剰な細分化を避けてもらうために、「インプレッションボリュームを高めると機械学習が促進されるので不必要に細分化をしないでね」と発言していたのが実際です。

検索広告である以上、広告をしたい商品・サービスを欲しいと思う人はどんなニーズがあるのか、そのニーズがある人はどんな言葉で検索するのか、その検索をしている人はどんな広告なら興味を持ってクリックしてくれるのか、リンク先ページでどんなことを伝えれば商品・サービスを買ってくれるのかを考えることが重要です。「適切なターゲティングおよび広告・リンク先の設定ができる程度に分類をしたら、それ以上の細分化は不必要で機械学習に悪影響だからしないでね」というのが「インプレッションボリュームを高めると機械学習が促進される」の趣旨です。

「インプレッションボリュームを高める」ことを「表示回数を増やす」ことと誤解して、なるべく広告グループはまとめたほうが良いと思い込んで、なるべく少ない広告グループにキーワードを詰め込んだほうが良いと誤解をされている方や、そのような情報発信をしている人がいますけれども誤りです。あくまで検索広告の基本に沿ってキーワードと広告の組み合わせを作るのが優先です。不必要な細分化をしなければいいので、あえてインプレッションボリュームを高めようとする必要はありません。

広告グループあたり、2つの拡張テキスト広告と1つのレスポンシブ検索広告を作成すると機械学習が促進されて最適化されるのか

これも背景を理解しないと誤解してしまいます。

実際は、「色々なユーザーのニーズや視点に対応できるように、様々なバリエーションの広告を用意してね」というのが趣旨です。広告を考えるのはそれなりに手間と時間と頭を使うので、A/Bテストができてやってる感を見せられる最低ラインの各広告グループあたり2個の拡張テキスト広告しか作らない運用者が多かった背景を受けてのGoogleの発言です。

この背景を誤解して「各広告グループあたり2つの拡張テキスト広告と1つのレスポンシブ検索広告を作成するのが【最適だ】」という発言をする人がいます。さらに困ったことにGoogleの無料電話サポートなども、あたかも「2つの拡張テキスト広告と1つのレスポンシブ検索広告が最適である」と取れる発言をすることがありますので注意が必要です。

あくまで「様々なニーズや視点に対応できるように、色々なバリエーションの切り口の広告を作ってね」が趣旨です。もし、本当に1パターンしか広告を作りようがないくらい検索ユーザーのニーズも視点も限られていて、商品・サービス的に言えることが他にないのであれば1パターンの広告だけでも構いません。その場合は無駄に最適じゃない広告を別に作ってまでGoogleが推奨する本数にする必要はありません。一方で、不必要に広告のパターンを増やしすぎることも過剰な細分化と同じで機械学習を妨げる可能性はありますから避けるべきです。

なので、この観点でも機械学習が促進される云々という発言に惑わされずに、その広告グループに含めているキーワードで検索している検索ユーザーが興味を持ちそうな切り口のライティングをするという、検索広告の基本に沿って考えれば十分です。逆に機械学習の促進うんぬんを考えると余計な広告を作成してしまったり、逆に本当は作ったほうがいいパターンを作らなくなってしまうので、変に意識しないほうがいいでしょう。

レスポンシブ検索広告を使うと機械学習が促進されて最適化されるのか

最近のGoogleは、アカウントによっては管理画面上で作成するデフォルトの広告フォーマットがレスポンシブ検索広告になっていたり、上記のポイントのようにレスポンシブ検索広告を作成することを推奨してくるなど、レスポンシブ検索広告を推してきています。なお、「レスポンシブ検索広告しか作れないアカウントが出てきた」と発言している人がいますが、誤りです。Google 広告エディターからはもちろん、ブラウザの管理画面内でもレスポンシブ検索広告を作成する画面内から、拡張テキスト広告を作成する画面に切り替えができます。

ところで、非公式な会話ではありますがGoogleから、「Google 検索の検索結果に表示されている言葉が同じなら、その広告の広告フォーマットが拡張テキスト広告でも関係がない」と回答を得たことがあります。なので、拡張テキスト広告の内容をバラしてアセットとして登録してあるレスポンシブ検索広告はまったくの無意味です。どころか、検索語句と広告見出しの関係もわからなくなりますし、変なパターンの広告が生成される可能性もありますからやらないほうがマシです。

広告グループ内のキーワードが複数の語句で絞り込んでいる部分一致のキーワードだったりなど、広告を表示する検索語句を限定している場合、広告が表示される検索語句が予想しやすいわけなので、その言葉で検索している検索ユーザーがクリックしたいと思う見出しがどんなものかを考えて、拡張テキスト広告を色々なパターンを作ってあげれば十分です。

ではレスポンシブ検索広告はどんなときに使えばいいかと言うと、絞り込んでいない部分一致のキーワードなどで広くリーチをとっている広告グループで、新しい切り口や言い回しを探すために補助的に使うといいでしょう。

Googleは広告フォーマットによる差はないと(非公式にではありますが)発言していますから、レスポンシブ検索広告をあえて使う意味がない場面で、無理にレスポンシブ検索広告を使う必要はありません。むしろ、レスポンシブ検索広告を使う必要がない場面でレスポンシブ検索広告を使ってしまうと、拡張テキスト広告とダブって不必要な細分化をしているのと同じ状態になってしまいます。
逆の考え方をすると、検索語句と広告見出しの関係などを考えて広告のライティングを調整したり、表現による結果の差を比較したりせず、とりあえずいい感じに配信して欲しい場合は、レスポンシブ検索広告だけを作成しておいても十分です。

広告カスタマイザやキーワード挿入機能を利用して広告グループをまとめてアカウント構造をシンプル化させると機械学習が促進されて最適化されるのか

結論を言うと、「アカウント構造をシンプル化すると機械学習が促進されて最適化されるから」という理解なのでしたら、キーワード挿入機能や広告カスタマイザを利用しないほうが無難です。

たしかに、広告カスタマイザやキーワード挿入機能を適切に使うことで、キーワードのニーズごとに適切な広告とリンク先を設定し、異なるニーズの広告とリンク先を含めないという、適切な分類を維持したまま広告グループをさらにまとめることが可能です。

しかしながら、キーワード挿入機能はキーワードのリーチの範囲を適切に設定していないと、他にもっと適切なキーワードがあったのに思わぬキーワードが挿入されてしまったり、本来は助詞でつなぐべきところに不自然にスペースが入った広告になってしまったりしますし、広告カスタマイザについてはユーザーを誤解させる広告が表示されてしまう場合もありますから、取り扱いには注意が必要です。

「地域名を広告に含めると関連性が高まる」と考えたなどで、target locationの広告カスタマイザを利用している場合によく間違いがあります。それは、実際にサロンがあるのは新宿駅前なのに、西東京市に住んでいる検索ユーザーが自宅で「ヒゲ脱毛 西東京」と検索しているときに「西東京市のヒゲ脱毛なら」という広告を表示してしまうケースです。関連性が上がって品質評価が高まるどころか、ニーズがない検索ユーザーにクリックされてしまっているのでお金をかけて無駄なクリックを獲得しています。まだ「ヒゲ脱毛 西東京」という検索キーワードに対しても「痛くないヒゲ脱毛/新宿駅すぐ」と表示しておいたほうがマシです。

アカウント構造をシンプル化させて機械学習を促進させて最適化することよりも、検索ユーザーに適切なメッセージを届けて、クリックして欲しいユーザーにクリックしてもらい、クリックしてほしくないユーザーにはクリックされないようにする方がよっぽど重要ですから、変にアカウント構造をシンプル化させようと思わないほうがいいでしょう。

最適化すべきはアカウントではなく実際に検索ユーザーに見てもらう広告だ

今回取り上げたのは、いずれもアカウントを最適化しようとして、検索広告をより良くするために何をすべきかという本来考えるべきことを見失ってしまった例です。広告カスタマイザを利用してアカウント構造をシンプル化させるとか、広告グループあたり2個の拡張テキスト広告と1個のレスポンシブ検索広告を作るなどは、明確になにをすればいいのかの「答え」が書いてありますのでとっつきやすいですが、同時に本来すべきことを見失って無駄なことをしてしまったり、むしろ逆効果につながったりしてしまします。

有り体な言い方ですが、検索広告は「こういう物が欲しい」「こういうことに困っている」と自分のニーズを検索語句という形で表現している検索ユーザーに対して「それだったらうちの商品・サービスはどうですか?」と提案する、非常にプリミティブな広告です。まずは、広告をする商品・サービスはどんな人のどんなニーズに合うものなのか、そのニーズを持っている人はどんな言葉で検索するのか、その言葉で検索をしている人はどんな広告だったらクリックするのか、クリックした人にはどんなページを見てもらえば商品・サービスを買ってもらえるのか、そこをまずしっかりすることが肝心です。

その上で、不必要な細分化などの機械学習の促進を阻害するような作りを避けることで機械学習がより良くしてくれる可能性があります。さらに、リーチを広めにとったり、ずらした訴求のアセットを含めたレスポンシブ検索広告を用いるなどの遊びや余白を持たせることで、機械学習でなければアプローチできなかったニーズにも広がるかもしれません。このように、検索広告については機械学習の促進はあくまで上乗せの要素であって、最優先すべきものではありません。