クリック率の過度な改善が費用対効果を悪くする

インターネット広告においてはクリック率の改善がとても重要です。

クリック率が低い広告は、クリック単価が高まったり表示回数が減ってしまったりしますから、クリック率の改善は常に意識しなければなりません。

ただし、クリック率を【意識しすぎる】のはおすすめできません。

なぜなら、「クリック率の改善」を意識しすぎると、かえって広告自体の費用対効果を悪化させる可能性があるからです。これは、検索広告でも当てはまりますが、特にディスプレイ広告やSNS広告などの、画像をクリックしてもらうタイプの広告で特に注意が必要です。

広告媒体はクリック率が改善されると嬉しい

まず、Google 広告を始めとする広告媒体は、表現の違いはあれど「クリック率の改善が大切だ」と説いています。そして、表示されやすかったりクリック単価が相対的に低かったりするなど、クリック率の高い広告の方が優遇されていると考えられる挙動が見て取れます。

それもそのはずで、広告媒体は広告がクリックされればクリックされるだけ儲かります。広告枠も限られていますので、クリックされやすい広告をなるべく多く表示したいわけです。クリック率が低い広告に広告枠を与えるのは機会損失です。

なので、クリック率が高い広告を優遇したり、広告主たちが進んでクリック率を改善したくなるように誘導したりするのは当然の流れです。

広告媒体を小売の店舗に例えるとわかりやすいと思います。

棚(広告枠)には『売れる商品』(クリック率が高い広告)を優先的に並べたい(表示させたい)と思うのは自然なことでしょう。あえて『売れない商品』(クリック率が低い広告)を並べるために『売れるている商品』を下げてスペースを空ける店舗オーナーはいませんよね。

広告主様には「誰にクリックされるのか」がとても重要

広告媒体は「広告がクリックされた時点」で儲かりますから「クリック率が改善された」だけでプラスになります。誰にクリックされても関係がありません。1クリックは1クリックです。単価の多少の高い/安いはあれど、クリックの価値はあまり変わりません。

しかし、広告主様にとってはそうではありません。

広告がクリックされただけでは意味がなく、広告がクリックされた後に、広告をやっている目的が達成されなければ広告主様にとっては意味がありません。つまり、1クリックの価値が内容により大きく変わります。

目的が達せられないクリックは広告費だけが取られるので最悪です。

なので、常にクリック率を意識しなければなりませんが(広告が表示されなかったりクリック単価が高くなってしまうため)、同じくらい「だれにクリックされているのか」も考えなければなりません。

広告媒体に乗せられてクリック率の改善ばかりを意識してしまうのは、広告主様にとってプラスにならないどころかマイナスになることさえあります。「だって媒体はクリックされただけで儲かるからね」と一歩引いた目で考える姿勢も時には必要です。

クリック率の改善は広告媒体と広告主様にとって Win - Win に見せかけた Win - Lose にも容易になり得ます。

クリック率を意識しすぎた失敗例

クリック率を意識しすぎると、「お客さんになってくれる可能性がない(とっても低い)人」にまでクリックされてしまい、広告費の費用対効果を悪化させてしまう恐れがあります。

すべてのパターンを網羅することはできませんが、代表的な例を紹介します。

BtoBの検索広告で「とは?」検索に広告を表示させると失敗しがち

BtoBでは意味がわからない言葉が数多く登場します。

なので「DXとは」や「BIツールとは」のような「とは検索」がかなり多くされ、このような検索に対して検索広告を上位に表示させるとかなりクリックされます。なので、「【マーケ担当者必見】DXとは? - いまさら聞けないDXを徹底解説」のような見出しの検索広告はクリック率が高めになりがちです。

が、果たして「DX とは」と検索していて 「【マーケ担当者必見】DXとは? - いまさら聞けないDXを徹底解説」 なんて見出しをクリックする人が顧客になりうるのか、と考えなければなりません。

ゼロではないものの、末端担当者やただ情報収集をしているだけの人なども多く含まれるため、コンバージョン率はとても低いと考えられ、優先して取りたいクリックではないでしょう。(そういう人はそもそもたぶん広告枠と自然検索枠の区別もついてないっぽいですし。)

女性下着の通販で着用イメージの写真を広告に使用すると失敗しがち

これは想像に難くないと思います。

ただの商品画像よりもモデルさんが実際に着用している写真の方がクリック率が高くなりがちです。

が、「下着姿の女性の写真」に興味があって「もっと下着姿の女性の写真が見れるかも」と期待してクリックする人も多いため、販売に繋がらずに費用対効果はむしろ悪くなりがちです。

このケースでは性別等によるターゲティングである程度はカバーできますが、それでもまだ不十分です。

鼻の下を伸ばして広告をクリックするのはおっさんに限られません。女性でも「下着姿の女性の写真をもっとみたい」と思ってクリックする人は少なくありません。

有名タレントを起用した画像広告は失敗しがち

これも先の下着の例と同様に、「もっとタレントの画像が見られるんじゃないか」と期待しているだけで、そもそも何の広告なのかすら意識せずにクリックするユーザーが少なくありません。

先の下着の例とは異なり、こちらはターゲティングでカバーするのはかなり難しいため、より厄介です。

クリック率は「誰がクリックしているのか」とセットで扱え

「クリック率が高い広告と高くない広告のどっちが良いですか?」と聞かれたら「クリック率が良い広告です」と答えたくなる方も多いと思いますが、それは間違いです。

正解は、その二択には答えずに「それぞれどんな内容の広告で、どんな人がクリックしてるんですか?」と聞き返すことです。

失敗例としてあげたのは極端な例ですが(でも結構やっている人が多いんですけど)、なるべく多くの人がクリックしてくれるようにハードルを下げるような表現を用いる程度はふつうにやっている担当者も多いと思います。

例えば、法律事務所であれば「匿名で電話相談ができますよ」とか、過払い金請求であれば「借りた会社を覚えてなくても大丈夫ですよ」などです。

このような謳いにより、クリックや問い合わせの件数自体は増えたとしても、顧客が増えるかどうかはまた別の問題です。むしろ、顧客にならない人からの電話が増えて問い合わせの電話が繋がりにくくなったために、むしろ顧客は減ったなんてことにもなりかねません。

クリック率の改善により「いままではクリックしなかった人がクリックするようになる」側面があります。なので、「そのクリック率の改善によってクリックする人は、望ましい人たちですか?」とセットで考えることをおすすめします。

あえてクリック率を下げる判断も場合によっては必要

ターゲティングでは対象にならない人を省けない場合は、顧客にならない人にクリックされないように、あえてクリック率を下げるようにクリエイティブを変更したほうが良い場面もあります。

他の条件が同じならクリック率が高いほう良いのは事実です。そして、広告は表示されなければ文字通り始まらず、クリックされなければコンバージョンに至ることはありません。なので、クリック率を意識するのは重要です。

しかしながら単純にクリック率の数値だけを改善すればよいわけではありません。

「クリック率を改善したら広告全体も良くなる」なんてショートカットはありません。なのでクリック率について考える際でも、ただクリック率だけを考えるのではなく、常に「で、それって広告の費用対効果としてどうなの?」と、広告全体に目を向けて考えましょう。