細分化よりも集約化の方が良いとは限らない

Google・Yahoo!の検索広告のアカウントの構造の話題になると、必ずと言っていいほど「集約化したほうがいいのか、細分化したほうがいいのか」という話題になりますし、わたしもよく質問されます。そして、「アカウント構造を集約化させると機械学習が促進されるので最適化が進む」という派と、「いやいや、ユーザーのニーズに合わせて細かく出し分けたほうがいいはずだ」と信じて疑わない派が平行線の争いを繰り広げがちです。

代理店は「機械学習が進むから」とアカウント構造を集約したがり、それに対して広告主は「きめ細かくやって欲しい」と細分化されたままでの運用をして欲しがりがちな傾向があったりしますが、実際のところ両者ともにそうしたほうが良い根拠やデータを示すことはできないのが実際です。集約化したい側は「Googleがそう言ってる」、集約化させずに細分化してほしい側は「その方がいいと思う」と両者ともに明確なものがない状態で、聞きかじったことと印象を言い合ってるだけになるので話が深まりません。

今回はこの「細分化 vs 集約化」について、「機械学習」とか「最適化」などの、なんだかよくわからない言葉になるべく逃げずに掘り下げます。

そもそも検索広告の最適化とはなんなのか

検索広告の最適化については「検索広告の「最適化」を言語化する」でまとめていますので、この記事では結論のみを完結に述べます。要するに、検索広告の最適化は、どんなユーザーに広告を表示させ、どんなユーザーには広告を表示しないのか、どんな広告を表示するのか、どんなページに遷移させるのか、有効なクリックをどれだけ少ない広告費で獲得できるのか、その活動です。

細分化と集約化のどちらのほうが最適化されるのかを論じるには、Google・Yahoo!の検索広告の最適化の各要素について、どの要素にどのような理屈で良い結果になるのかという視点で考えなければなりません。

細分化と集約化のそれぞれの言い分

SKAGsのような細分化は、この属性のユーザーがこのキーワードで検索しているときはいくらで入札して、この広告を表示させて、このランディングページに遷移させるというのと細かく設定して調整をすることで、細かく出し分けをして最適化を図ろうとするアプローチです(「SKAGs」については「細分化の究極系 SKAGs について考える」で解説しています)。

一方で、「Hagakure」以降のGoogleが推奨をしている集約化は、様々なシグナルからの機械学習でユーザーのニーズを把握し、オークションが発生するごとに、広告を表示させるかどうか、いくらで入札するか、どの広告を表示させるかなどをリアルタイムで判断させることで、表面的なキーワードやユーザー属性の設定ではできないより高精度な最適化を目指す、というアプローチです。

言い分だけを見れば、集約化の方が細分化では実現できない高精度な最適化を実現できそうですし、Googleおよびそれに追従する代理店や個人の情報発信者も同じ理屈で集約化の方が優れていると言っています。最近よく聞く「レスポンシブ検索広告や広告カスタマイザを利用してアカウント構造をシンプルにしましょう」という論調も、まさにこれです。

たしかに、集約化が額面通りにその力を発揮してくれるのであれば細分化よりも集約化の方が優れていますが、実際はそう簡単なことでもありません。集約化にも弱点はあります。

集約化の弱点:自動入札の利用が前提

まず、「Hagakure」に端を発するGoogleの集約化に対する推奨は、スマート自動入札の利用が前提になっています。「機械学習を促進させてスマート自動入札を活用すれば、細分化するよりも高精度な出し分けができるようになりますよ」というのが「Hagakure」の触れ込みです。

スマート自動入札の利用が適さず、個別クリック単価で入札せざるを得ない場合は、スマート自動入札が細分化よりもより高精度な出し分けができるための前提条件を満たしません。また、集約化された構造で個別クリック単価で入札した場合は、大味な調整しかできなくなりますから、かえって最適化から遠くなります。

スマート自動入札の利用が適さない場合は色々ありますけれども、よくある例でいうと、電話で問い合わせを受けることをコンバージョンとしているなどで、電話を受けるスタッフを常駐させているようなケースです。自動入札だとその特性上、配信に偏りが生じることがあります。時間帯によってはコールセンタースタッフが対応しきれないくらい続けて電話が鳴ることもあれば、逆にスタッフは待機しているのにまったく電話が鳴らない日も発生してしまう場合などです。

単純に管理画面上のコンバージョン数を多くしようと思った場合はスマート自動入札に任せておいたほうがコンバージョン数は増えるかもしれませんが、取れない電話が鳴ることも、スタッフが待機しているのに電話が鳴らないこともビジネス的には損失です。ですから、このようなことが起きないように、あえて個別クリック単価でコンスタントに配信をするほうが費用対効果が高まることもあります。

また他の例でいうと、競合性が高いキーワードで、スマート自動入札に入札をさせたらクリック単価が高くなりすぎて1日の予算を数時間で使い切ってしまって、1日数クリックしかされないような状態になってしまうような場合もあります。個別クリック単価で低めに入札することで低クリック単価でなるべく多くのクリック数を集めて、そこからコンバージョンが獲得できているような場合、スマート自動入札にすることでクリック単価が上がりすぎてクリック数が減り、コンバージョン率は少し上がったけれどもそれ以上にクリック単価が高まってしまって、結果的にコンバージョン単価が上がって成果としては悪化したということも往々にして起こります。

この様にスマート自動入札も名前ほどスマートではなく万能ではありません。管理画面上のことだけを考えれば自動入札のほうが良くても、ビジネス全体や、現場のことを考えるとそうではないなどで自動入札の利用が適さない場合もありますから、「絶対にスマート自動入札のほうが良い」と思い込むことなく、柔軟に考えましょう。

集約化すると検索語句から見えないニーズを拾える

スマート自動入札が利用できるのなら、集約化をした上でスマート自動入札を利用しなければ得られないメリットもあります。例えば自分のニーズを正しく検索語句に反映できないユーザーに対する配信です。

「SKAGs」はキーワードごとに広告を出し分けようとするアプローチですから、ユーザーが検索してくるキーワードとそのニーズが予測できていることが前提となります。しかし、検索語句の言葉そのものからはまったくニーズがなかったり、何を意図しているのかがわからなかったりする場合は「SKAGs」は適さない場合があります。「SKAGs」だったらキーワードとして登録しなかったりむしろ除外したくなるような検索語句からも、集約化 x スマート自動入札ではコンバージョンが獲得できることがあります。

例えば、実際に私が手掛けた、振り袖のレンタル・着付けをしている広告主の例です。大学の卒業式に向けた振り袖のレンタル・着付けのプロモーションで、実際の検索語句を見てみると「浴衣 レンタル」という検索語句から少なくないコンバージョンが発生していました。実に嘆かわしいんですが、最近の大学生には振り袖と浴衣の区別がつきません。これはまさに集約化 x スマート自動入札の成果です。表面的な「浴衣 レンタル」という言葉からは卒業式用の振り袖の着付け・レンタルのニーズは読み取れませんが、そのユーザーの過去の検索行動などからニーズありと判断して広告を表示してくれたから獲得できたコンバージョンです。これをSKAGsで「浴衣 レンタル」というキーワードを登録したり入札したりするか、というと、しないでしょう。むしろ、「浴衣」で除外キーワードを登録したいくらいです。仮にSKAGsで「浴衣 レンタル」をキーワードとして登録して入札してしまったら、卒業式以外のニーズも拾ってしまう(というかそのほうが多い)ため非効率になります。

細分化 vs 集約化の結論

たしかに場面によっては集約化の方が優れていることもあります。

集約化のほうが優れている例をあげて、「細分化の時代は終わった」とか「もう細分化では成果が出ない」とか「細分化よりも集約化のほうが優れている」などと、盲目的に集約化以外はありえないと思い込んでしまっている情報発信をよく見かけます。ちなみに、Googleも基本的なスタンスはこれになります。公式がこういう姿勢なので正直困っています。

実際は、上述したとおり、スマート自動入札の利用が適さない場合など、集約化の方が最適化ができるための前提条件が整わない場合は、細分化をしてあげないと最適化ができないこともあります。なので場面に応じて考えなければなりません。

わたしは、基本的には集約化 x スマート自動入札の前提で考えますが、「今回はスマート自動入札の利用が適さないな」と判断した場合には迷わずに細分化して個別クリック単価に切り替えます。

必ずどちらの方が優れているというものでもありませんから、あくまで同じ目的のアプローチの違いだぞという前提で、どちらのほうがより望ましい状態にできるのかを、両方の選択肢を持った上で考えて試してみることをおすすめします。